2017/11/14

J・M・クッツェーの自己形成期(1)

非常に興味深い写真がネット上で見られるようになった。JMクッツェーが少年時代に、といっても15歳か16歳のころに、みずから撮影したスナップショットだ。思春期のジョン・クッツェーが何をめざそうとしていたか、3回に分けて紹介する。

16歳ころプラムステッドの家で撮影されたショット
クッツェーの自伝的三部作『少年時代』『青年時代』『サマータイム』の第一部は、少年ジョンが8歳になり、ケープタウンから内陸の町ヴスターへ引っ越したところから始まるが、5歳か4歳、あるいは3歳ころかと思える体験もエピソードとして盛り込まれている。最初の記憶をさかのぼる話が秀逸だ。母親とバスに乗って山間の道路を移動しているときのキャンディーの包み紙をめぐる記憶、あるいは、ヨハネスブルグの託児所の窓から見た、道路で犬が……というシーン(まあ、創作かもしれないけれど)。そして最終章は、アニーおばさんが死んで、ストライプのダサい制服を着て墓地へ行く場面で終わる。作品内ではこのとき少年は14歳、しかし実際にアニーおばさんが亡くなったのは、カンネメイヤーの伝記によれば大学入学後だから、これは時期を前後させた創作部分だ。

 第二部の『青年時代』では、すでに大学に入学して親元を離れて暮らしている。つまり17歳以降のことが語られるのだ。しかしこの時期と微妙に重なるようで重ならない思春期に、クッツェーが凝りに凝っていたのが写真だったことが明らかになった。上の写真は15歳から16歳ころ、つまり聖ジョゼフ・カレッジに通ってクリケットのクラブに属していたジョンが撮影したものだ。

 2017年11月7日付TLSに、この写真とともにハーマン・ウィッテンバーグの面白い文章が載った。ウィッテンバーグはJMクッツェーの二つのシナリオを書籍化した人で、クッツェーのハイスクール時代の写真ネガを託された人でもあったことはすでに書いた
「Absorption and intensity・没頭と熱中」というタイトルのこの記事は、16歳ころのクッツェーのライブラリーをめぐる内容で、二段組みの木製の本棚にならんだ50数冊の書物の中身について興味深い事実を教えてくれる。なんと、そこには英文学の小説は皆無で、シェイクスピアさえなかったと。では、いったいどんな本があったのだろう?
つづく