Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2014/04/26

ゲラのあいまに蕗を煮る/クッツェーは南アメリカを旅

今日はゲラとゲラのあいまの束の間の休日。昨日、クッツェー三部作の詳細な年譜をメールで送って、ようやくこれで、三作分の本文、かなり長い解説、詳しい年譜、著訳書リスト、写真キャプション、著訳者略歴などなど、本に必要な原稿がすべてそろった。

ジョン・クッツェーご本人はいまポール・オースターと南アメリカにいるらしい。先日はチリのサンチアゴにあらわれ、数日後はアルゼンチンのブエノスアイレスに姿を見せるという。6月にはふたたびノリッジ文学祭にも参加予定だというから、今年もまた、世界中を飛びまわっているようだ。

 そのクッツェーの自伝的三部作、ここまでたどりつくのに随分時間がかかった。でも嬉しいことに、大勢の方々の助力、協力をえることができたし、幸運なタイミングというのもあったかもしれない。でも、タイミングといえば、この企画が始まった直後にこの群島を襲った災害、災厄もあった。そして、いまや全世界を見舞いつつある不運も。
 
 でも今日は、朝から晴れて、ひさびさのまるごとの休日。どう使おうか、わくわくした。まず若い光があふれる午前に蕗を採ってきた。さっと湯がいて皮を取り、薄いだし汁で煮物にした。いまの蕗は皮を剥くと、なんだか頼りないほど細くなるけれど、あくも少なく美味しい。春まっさかりの味覚だ。

 午後はやっぱり風が起きた。ひゅうひゅう唸る4月の風は特有の黒っぽい埃を運んでくる。この風、吹きながら憂いもまた運びさってくれるといいのだけれど。

 この季節、新タマネギや春キャベツが美味しいときでもあって、キャベツ狂いでキャベツばかり食べている人もいるらしい。わが家でもスライスした新タマネギを軽く天日干しにして瓶に入れ蜂蜜酢を注いで漬け込み、それを湯がいた春キャベツでいただくのが流行っている。家人がどこかでレシピを入手して始めたものだけれど、これが予想外にいけるのだ。パンでいただく朝ご飯にも、ワインといっしょに夕ご飯の少し前にも。健康にもいいとか。

 結局、どんなときでも、食べ物と料理法は文句なく興味、関心がそそられるものであるらしい。でも、それはとりあえず、戦争とか災害とか緊急時から遠いところで営まれる暮らしにおいて、という条件つきだけれどね。

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PS: 南アメリカはアルゼンチンにいるらしいそのクッツェーの「小さいころロビンソン・クルーソーって実在の人物だと思っていた」というぶっちゃけたインタビューがここで読めます。ただしスペイン語!