Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2014/03/17

それでも春はくる


 机に向かうと窓の向こうに、濃いピンクの花芽がちらちら揺れる。寒彼桜が一足早く咲きはじめた。今年もまた、ヒヨドリがやってきた。2羽そろって桜の木の枝を大きく揺らして、どこかへ飛んでいった。
 どんな災厄が襲ってきても、毎年、春はやってくるのだ。「春をうらんだりはしない」という詩を思い出す季節はやってくるのだ。

この3年、いったい「わたしたち」は、なにを失い、なにを得たのか。この3年、「わたしたち」は途轍もなく鍛えられた。それだけは間違いない。


 またやって来たからといって
 春を恨んだりはしない
 例年のように自分の義務を
 果たしているからといって
 春を責めたりはしない

 わかっている わたしがいくら悲しくても
 そのせいで緑の萌えるのが止まったりはしないと


あの有名なヴィスワヴァ・シンボルスカの詩(沼野充義訳)だ。今年もまた、この詩のことばを一行一行、噛み締める。