Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2012/12/24

クリスマス・イヴに読む、 佐藤研著『最後のイエス』

 12月24日、いわゆるクリスマス・イヴ。いわずもがなの、イエス・キリストが誕生する前夜のことだ。そこで遠いむかし、なんというか一種の俄クリスチャンに育てられた者として読んでいるのが、この、佐藤研著『最後のイエス』だ。これがまた刺激的。

 キリスト教の信者が多いわけでもないのに、いつのころからか、たぶん第二次世界大戦後だろう、日本社会でもこの日を祝って、ローストチキン、シャンパン、ワイン、ケーキ、などなど盛りだくさんのごちそうを食べ、子どもたちはサンタクロースからプレゼントをもらう風習が根づいた。
 最初のころは、キャバレーやバーで赤い三角帽子をかぶった「オヤジ」たちがばか騒ぎする写真がメディアをにぎわせた。遠いむかしの話だけれど・・・。いまは家族中心、若いカップル中心のファッション?

 これらのモノ、モノ、モノを生産する産業と、その販売を後押しするメディアのなせる結果、といえるだろうか。モノを売る絶好のチャンスだから、この風習は日本に限らず、全世界に広まった。
 昨年ケープタウンからの帰路、トランジットしたドバイ空港にも(アラブ首長国連邦はもちろんイスラム教文化圏)大きなクリスマスツリーが飾られていた。

 さて、キリスト教である。この宗教はご存知のとおり、イエス・キリストという、大工の息子が家族を捨てて、バプテスマのヨハネのもとに馳せ参じたところから始まることは、つとに知られている。(ン?)

 といったことを、もう一度、おさらいするためにこの本を読んでいるのだが、これがめっぽう面白い。イエスという男を最初から聖人あつかいせず、あくまで人間として心理分析をしたり、当時の社会を背景に、彼がなぜあのようなことをしたか、言ったか、という視点から解き明かそうと試みている。新約聖書の翻訳で名高い、屈指の学者が、である。

 きわめて刺激的なこの書物、来年3月に発売される J・M・クッツェーの新著『The Childhood of Jesus』を読むための下準備にはうってつけではないか。イエス・キリストについてこの作家が「that aberrant Jewish prophet Jesus of Nazareth/あの奇人変人のユダヤ人預言者、ナザレのイエス」と言っていることから考えても、あるいは、John とは「洗礼者ヨハネ」つまり「バプテスマのヨハネ」であることから考えても・・・。

 いまは、Merry nothing!