Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2012/01/14

アニヴァーサリー・ブルース/エドウィージ・ダンティカ

何周年記念日というのは傷つける。身体を残忍なほど無感覚にする。気持ちをしたたか殴りつける。大災害から何周年というのはとりわけ。わたしたちは死者のことを思い出すから、1人や2人ではない、何百、何千という人たちの、正確にいうと30万人の死を思い出すから。自分の痛みがやっと静まったと思ったちょうどそのとき、またよみがえってきて、日々のうずきから、いつの日か消えることを願っているそのうずきから、世界が終わると思えたあの瞬間に経験した苦しみへ、ずきんずきんと広がっていくから。
 
2年前、ハイチでは大地がぱっくりと口を開けて、建物は崩れ落ち、人びとが死んだ。軍隊が降り立ち、軍の展開は戦闘地区さながらだった。NGO組織もまた群れをなしてやってきて、総勢およそ1万から1.6万にまでふくらんで、ハイチは人口一人当たり、世界でもっとも多くのNGOを受け入れる国となった。世界中の権力者から、大小の規模にかかわらず、送られると約束された資金は、99億ドルにものぼったけれど、実際に手渡されたのはその半分にも満たない。

2年前、・・・

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「プログレッシヴ」に掲載されたエドウィージ・ダンティカの「Aniversary Blues」の出だしです。ハイチを大地震が襲ったのはちょうど2年前のことでした。それから1年あまりたった昨年の3月11日、日本にもカタストロフはやってきた。
 ダンティカのこの文章は、「ブルース」とタイトルがついているだけあって、原文はとっても音楽的、というか、ことばがたたみかけるようなリズムをもっていて、心に、ずんずん響きます。全文はこちらへ。

文末に、Edwidge Danticat is a fiction writer, essayist, and memoirist. In 2011, she edited “Haiti Noir” and “Best American Essays.” This is an excerpt from Edwidge Danticat's essay in the February 2012 issue
とありますので、本を入手すれば、完全バージョンを読むことができます。