Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2011/08/10

待望のビニャヴァンガ・ワイナイナの新著

ビニャヴァンガ・ワイナイナ/Binyavanga Wainaina の『One Day I Will Write About This Place」を読んでいる。仕事を放り出して読みたくなるので、ちょっと困る。

 1971年にケニアで生まれたワイナイナ、少年時代の話からはじまり、南アフリカのトランスカイ大学に留学していた90年代の話、帰国して故郷に帰るとちゅうのナイロビの話など、いろいろ。
 memoir とうたってある。そうか、自分の生地(リフト・ヴァレー州のナクル)や故国や、アフリカ大陸や、そこに住み暮らす人たちの姿を「外部の目」からではなく、もっと身近な人の目線から、シンパシーをもって(批判も含めて)、彼ら自身の物語として書かれたものを読みたい、だから自分で書きたい、と思っていたことがひしひしと伝わってくる。

 文体がいい。スワヒリ語やキクユ語や、南アにいるときはその土地のことばや、とにかく、「説明」ぬきでどんどん取り入れるラップのような文章なのだ。細かなところまで全部「わかる」わけではないけれど、彼が書きたかったことの中身はよ〜くわかる。
 見聞きしたこと、体験したこと、それを等身大の目で描く。視線はかぎりなく地面に近い。

 おなじケニアの大作家、グギ・ワ・ジオンゴの賛辞はこうだ。

「ビニャヴァンガ・ワイナイナはシンガーであり、ことばの画家だ。読者に、匂いを、音を、手触りを、光景をありありと伝える。とりわけ、ケニアやアフリカで起きている事柄の表層を生き生きと具体的に捕えながら、その下で繰り広げられる生のドラマとバイブレーションを感じさせるところがすごい。どの行からも、どのパラグラフからも、生活と、笑いと、パトスがはじけてくる」
 
 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェが毎年ラゴスで主催するワークショップに、ワイナイナは第一回から毎回欠かさず、ゲストとして参加している。アディーチェとは友だち、というかほとんどコムラッドに近いかも。第三回ケイン賞をワイナイナが受賞したとき、アディーチェは次点だった。2002年のことである。