Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2010/03/23

『マイケル・K』が重版に!

ながらく待たれていた『マイケル・K』の重版が決まりました!

 この物語の背景は、今年6月にワールドカップが開催される南アフリカです。31歳の庭師マイケルは、ケープタウンから手製の手押し車に病気の母親をのせて、内陸のプリンスアルバートまで行こうとします。そのマイケルが遭遇する出来事のなんと過酷なこと。
 J・M・クッツェーが43歳のときに発表した作品です。最初のブッカー賞受賞作、日本語初訳のクッツェー作品でもありました。

 主人公は警察につかまったり、労働キャンプに入れられたり、衰弱して半分刑務所のような病院に入れられたりしながら、ひらりひらりと身をかわし、田舎に舞いもどっては農場や山奥に隠れ住み、カボチャを育ててひとりで生きていこうとします。抑圧システムの外で生きのびるために、ひたすら逃亡をくりかえすマイケルの姿が圧巻。
 
 この作品にはクッツェー作品のなかでも際立った、不思議な魅力があります。あれはなんなんだろう? ひょっとしたらクッツェー自身がマイケルという作中人物をとても「気に入っている」ことによるのかも。
 
「訳者あとがき」の情報も訂正しました。読んでくれたみなさん、これから読んでくださるみなさん、ありがとう! クッツェーという作家の魅力が、さらに多くの読者にとどきますように!

このすばらしき、どうしようもない世界」へようこそ。