Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2009/01/17

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ──『半分のぼった黄色い太陽』

今年は、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの長編小説『Half of a Yellow Sun/半分のぼった黄色い太陽』を訳している。

 パレスチナではガザへの空爆から地上侵攻へ、どんどん死者数が増えて。死者は分かっているだけで1100人を越えた。民間人が7割、それも女性と子どもが多い。国連施設まで爆撃されて、小麦も燃料もない状態へ追い込まれている。
 暮れから、イスラエル人ジャーナリスト、アミラ・ハスの記事を訳してきたが、思うところあって、この辺で本来の仕事に専念したいと思う。

 いま訳している小説は、1967年7月から70年1月まで、アフリカのナイジェリアと呼ばれる土地で起きた、ビアフラ戦争がテーマだ。この戦争では、戦闘による死者が10万人、餓死者が50万とも200万ともいわれている。ものすごい数字だ。でも、小説はただただ「悲惨な話」を書いているわけではなく、そこで生きる人間の有り様が活写されている。統計上の数字にちらりと出て終わるものが、名前をあたえられ、顔をあたえられ、語ることばをあたえられる。
 
 若い作家が、祖父母、父母が体験した戦争を描く。ナイジェリアでは話題にすることがタブー視されてきた戦争を。それも女性の目から見た話として。そこが読みどころ。