Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2008/11/08

アフリカの若い作家たち

この夏、ナイジェリアで面白いワークショップが開かれた。ビアフラ戦争をテーマにした長編『半分のぼった黄色い太陽』(河出書房新社から邦訳予定)によって、2007年のオレンジ賞を最年少で受賞したチママンダ・ンゴズィ・アディーチェが、ナイジェリア国外から実力作家たちを招き、8月19日から約10日間の、若い作家を育てるワークショップを開いたのだ。スポンサーとなったのはラゴス市のフィデリティ銀行。

 講師陣がなかなかの顔ぶれだ。ケニアからは2002年にケイン賞を受賞したビンヤヴァンガ・ワイナイナが、米国からはピュリッツァー賞の最終候補となったベストセラー作家デイヴ・エガーズと、カリブ海文化と米国黒人文化の深いつながりを書くマリー・エレナ・ジョンが参加。
 今年が第2回のワークショップは、参加者を500人の応募者から25人にしぼり、書くことをめぐって、具体的作品をめぐって、これから作品を発表しようとする卵たちが、すでに世界的に評価の高い作家たちと忌憚なく、しかもユーモアたっぷりに論じ合ったという。さぞや中身の濃いセッションであったろう。

 ナイジェリアは約10年前に軍政から民政へ移行した。その結果、壊滅状態とまでいわれた出版、ジャーナリズムが息を吹き返し、ここ数年は目をみはる活動が伝えられる。
 その一端はアディーチェのような若い作家たちが、北側諸国の大学構内や出版サロン、自室に閉じこもることなく、独自に出版社を起こしたり、ワークショップを開いたり、「考える人」を育てる活動に惜しみないエネルギーを注いでいるからかもしれない。
 アフリカでは「書くこと」が政治、経済、社会の活動に直結しているのだ。

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2008年10月28日北海道新聞夕刊に掲載したものです。