Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2008/10/29

バッハはやっぱりグールド──『鉄の時代』こぼれ話(2)

<ショパンはリパッティ、
バッハはやっぱりグールド>

鉄の時代』には、主人公のエリザベス・カレンが夕暮れに、ピアノにむかってバッハやショパンの曲を弾く場面がある。バッハは作者クッツェー氏のごひいきの作曲家だ。訳了した2007年9月、ふと、だれの弾くショパンやバッハが好みなのだろう、と思って訊ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「ショパンは、若い演奏家は知りませんが、わたしが好きなのはたぶん、何年も前に亡くなったルーマニア出身のディヌ・リパッティです。バッハとなると、やはりグレン・グールドを選ばざるをえないと思います。とはいえ、ミセス・カレンがバッハの音楽に、グールドとおなじアプローチをしているわけではありませんが──」

 この最後のところでは、思わず脱力──!!