Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2008/06/27

映画『Disgrace/恥辱』のシナリオライターは語る

 J.M.クッツェーの1999年に発表された小説『Disgrace/恥辱』が映画化された。主演がレイフ・ファインズからジョン・マルコヴィッチに変わって(たしか、ファインズの前にも別の候補が噂されていたような…そう! ジェレミー・アイアンズ! この俳優がデイヴィッド・ルーリーを演じるのを見てみたかったナ)、最終的にはオーストラリアのスティーヴ・ジェイコブズ監督、アナ=マリア・モンティセッリ脚本によって完成。撮影は2007年はじめに、ケープタウンとその近郊シーダーバーグで行われ、ケープタウン大学も撮影場所に使われた。
 脚本を書いたモンティセッリは女優からシナリオライターに転じた人で、クッツェーのこの小説を買ったとき、まさか自分がそのシナリオを書くことになるとは思わなかったそうだ。「でも、すぐに、これはすばらしい映画になると思ったの・・・いろんな思想や複雑なものがぎっしり詰まった本だから・・・さんざんスクリプトを読んだけれど、どれも陳腐で意外性に欠けていた。思想ってものがない、というか、自分を見つめさせるような、困難なことに直面させられて、それを否応なく、深く考えさせる論点が含まれていないの」。
 映画を監督したスティーヴ・ジェイコブズはモンティセッリの夫。「THE AUSTRALIAN/2007年7月18日付」に彼女のインタビューが掲載された時点で、2008年の公開に向けて、映画はポストプロダクションの最中だというから、フィルムはすでに完成したと考えていいのだろう。

 アパルトヘイト撤廃後の南アフリカを舞台にした小説『恥辱』の主人公は、「大学改革」に失望した大学教授だ。教えている女子学生のひとりを誘惑したことをきっかけに、彼の人生は混乱のきわみに陥る。モンティセッリによると、このキャラクターは彼女に、映画のなかで、男の欲望と、権力と、偽善を深くさぐりたいと思わせたという。アフリカで映画を製作したいと思っていた、モロッコ生まれのモンティセッリは、映画『恥辱』でその夢がかなったわけだ。

 英国の映画製作会社のいくつかが、この小説の映画化権についてオプションをもっていたため、その期限が切れるのを待って、彼女はこの物語の映画化を熱望する人たちの列に加わった。もちろんその前に、原作者クッツェーに自分のシナリオライターとしてのデビュー作「ラ・スパグノーラ」(2001)を観てもらい、強い印象をあたえておいた。

「わたしにとって最も重要なことは、この本を歪曲しないこと、素材に誠実であることだった」と彼女は述べている。「シナリオを書くための決め手は、登場人物たちがなぜその行動をとるのか、彼らがどのように考えているのか、そのような状況のもとで生きるのはどういうことか、それをきちんと理解することだった。良いスクリプトを書くのは本当に大変だけれど、でも、こつをしっかり理解すれば難しくはなくなるものよ」とも。

 オーストラリアや南アフリカでは、2008年公開が予定されている。
 日本でも、一般上映されるといいなあ!

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You ought to be in pictures:THE AUSTRALIAN,July 18, 2007」をもとに加筆しました。