Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2014/08/27

クッツェーが選んだ12冊とは

クッツェーが選んだ12冊とは:

1)ハインリヒ・フォン・クライスト『O公爵夫人』
2)ロベルト・ヴァルザー『助手』
3)ダニエル・デフォー『ロクサーナ』
4)サミュエル・ベケット『ワット』
5)フォード・マドックス・フォード『良き兵士』
6)フランツ・カフカ『短篇集』
7)パトリック・ホワイト『完全な曼荼羅』
8)ナサニエル・ホーソーン『緋文字』
9)レオ・トルストイ『イヴァン・イリイチの死』『主人と下男』『ハジ・ムラート』
10)ロベルト・ムージル『三人の女』
11)ギュスタヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』
12)詩のアンソロジー

 意外や意外、ドストエフスキーは入っていませんでした。ふ〜ん。しかし、どういう経緯で選ばれたのか、アルゼンチンの出版社が出すシリーズだし、スペイン語版なわけでしょうから、すでに翻訳が出ていて、よく読まれているものをあえてはずしたということは考えられる。
 とにもかくにも、昨夜、このラインナップが発表されたと伝えるコロンビアのニュース。スペイン語なので、部分的にしか分かりませんが、タイトルをなんとか拾って上に載せました。

こうして見ると、ドイツ語圏作家が4人、英語圏作家が4人+1人、フランス語が1人、ロシア語が1人。
 ドイツ文学、フランス文学、イギリス文学という国別とか、「国語」のくくりから完全にはみ出てしまう作家が多い。ヴァルザーはスイス人だし、ベケットは途中からフランス語だし、カフカはプラハの住人だったし、ホワイトはオーストラリアだし・・・。
 もちろん、文学作品としてこれがすべてでも、ベストでもないと、クッツェー自身はことわってはいるものの、とりあえずこれがスペイン語圏で文学をやろうとする人たちへ向けて、クッツェーが発信する「個人ライブラリー」ということでしょうか。

PS: 二枚目の写真に写っている対話の相手は、コロンビアの若手作家フアン・ガブリエル・バスケスだそうです。クッツェーはいつものようにダークスーツにノーネクタイですが、バスケスはジーンズというくだけたスタイル、この対比もまた面白い。(ミーハー観察者の独り言です。)

PS: ボルヘスの短篇は勘違いでした。スペイン語の記事のなかでは、ボルヘスの図書館の話はあくまでイントロとして用いられていたようです。考えたら、これは翻訳書シリーズですから/汗。詩のアンソロジーが一冊入っていました。すみません! 


付記:2017.2.1──2014年8月にボコタの中央大学を訪れたクッツェーが、この個人ライブラリーについて、なぜこの12冊なのかということを詳しく語った動画があります。そちらもぜひ見てください。詳細はこのポストで。