Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2010/04/04

アディーチェ『半分のぼった黄色い太陽』

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェのベストセラー小説『半分のぼった黄色い太陽』の初稿ゲラ読みが一段落して、ほっと一息です。
 これは1960年代末にナイジェリアで起きた内戦/ビアフラ戦争を時代背景に、そこで生きた人たちの姿を、三色の珠にして交互に繋いでいったような物語です。
 
 語り手は3人います。まず田舎から出てきたウグウという13歳の利発な少年、つぎが裕福な家の美しい娘でロンドンの大学で修士をとったばかりのオランナ、そして9世紀にさかのぼるイボランドのイボ=ウクウ美術に魅せられてやってきた碧眼の英国人リチャードです。この3人が代わる代わる語り手となって物語はすすみます。

 オランナにはカイネネという双子の姉がいて、容貌も性格もまったく違います。そのカイネネにぞっこん惚れ込み恋人になるリチャード。いっぽうオランナには、大学で数学を教えるオデニボという一風変わった恋人がいて、やがて2人は結婚します。ウグウはこのオデニボの家のハウスボーイです。

 ひとつひとつの出来事が三面鏡に映し出されるように、微妙に重なりあいながらもくっきりと異なる視点から立体的に語られて行く、そこがすごく面白くて新鮮です。なんといってもアディーチェの歴史感覚と人物たちの心理描写には舌を巻きます。この作品を出したとき彼女は弱冠29歳だったというのも、訳了してあらためて驚きました。

 アップしたのは英国版、米国版のそれぞれのハードカバー(上段左のリアルな少年の顔が英国版)とペーパーバック(下段左の少女の横顔が英国版/註:勘違いして逆に書いていましたので訂正します。2011.1.1)のカバー写真です。日本語版はどんなカバーになるのでしょう。楽しみです。

 ちなみに発売は8月の予定。版元は短編集『アメリカにいる、きみ』とおなじ、河出書房新社です。じつはほかにも、おっ! というビックリニュースがあるのですが、それはもう少したってからお知らせします。お楽しみに〜。